純日本紅茶(浦和区岸町4)の「狭山オレンジペコー」が、8月上旬にイギリスで開催された食品の国際コンテスト「GREAT TASTE AWARD(グレートテイストアワード)2023」(GTA)のブレンドティーバッグ部門で1つ星金賞を獲得した。
GTAはイギリスの高級食品組合「ザ・ギルド・オブ・ファインフード」が主催する食品の審査会で、1994年に始まった。純日本紅茶社長で紅茶製茶師の中峰剛さんによると、3つ星~1つ星を獲得できる出品者は全体の3割以下だという。
中峰さんは2015(平成27)年まで、北浦和駅前で中国茶専門店「翡翠館」を経営していた。お茶の仕入れのために台湾の茶産地へ通い続けるうち、茶農家の長老に気に入られて紅茶の製茶方法を教わった。台湾北部では1920年代ごろから欧米輸出用の紅茶を作り続けており、高い製茶技術が残っていたという。
国産の茶葉で紅茶作りを始めた中峰さんは2012(平成24)年、県内産の紅茶でGTAの2つ星を獲得。2014(平成26)年には「さいたま市ニュービジネス大賞」でグランプリを受賞、その後は全国の茶産地で紅茶の製造技術を磨いてきたという。しかし、県内では2016(平成28)年を最後に、パートナーとなる茶農家が見つからずにいた。
今回、中峰さんとともに紅茶作りに挑んだ田中製茶園(入間市)代表の田中信夫さんは、ニューヨークのお茶専門店を訪れた際、高い評価を得ている紅茶の多くがオーガニックであることを知り、2016(平成28)年から農薬や化学肥料を使わない農法での茶栽培に取り組んできた。2021年に中峰さんと出会い、2人で世界に通用する紅茶作りを目指してきたという。
受賞茶の審査員コメントは「爽快で爽やかな味わい、フローラルで蜂蜜を思わせるアロマの奥に穀物のロースト感が感じられる」。中峰さんによると、「化学肥料を使わない茶葉は紅茶の香りが立ちやすい。農薬を使わない栽培方法では、ウンカと呼ばれる羽虫が茶葉をかむことにより、茶葉から蜂蜜のような香りが立つ」という。
受賞茶は、全国で最も普及している「やぶきた」品種の二番茶を紅茶に仕立てたもの。緑茶の場合、一番茶に比べ、二番茶は格段に値が落ちる。田中さんは「一番茶は緑茶として、二番茶は紅茶として適正価格で販売できれば、減少が続く茶農家に歯止めをかけられる。将来は狭山紅茶で3つ星を獲得して、国内はもちろん中東やヨーロッパにも輸出していきたい」と意気込む。
受賞茶は純日本紅茶、田中製茶園の各ショップのほか、浦和駅前「エッコラ」、岩槻「ヨロ研カフェ」で扱う。