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さいたまでクワイの収穫始まる おせちに欠かせない「田んぼのサファイア」

収穫し、水洗いしたクワイ。青色が映える

収穫し、水洗いしたクワイ。青色が映える

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 埼玉県南部を中心に栽培されている伝統野菜「慈姑(クワイ)」の収穫が11月下旬、「高畑くわい出荷組合」(さいたま市緑区高畑)で始まった。

収穫したクワイを水洗いする若谷さん

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 クワイはオモダカ科の水生植物で、芋のような丸い塊茎(かいけい)から大きく芽が出ている様子が「めでたい」「芽が出る」縁起物として、正月料理に欠かせない伝統野菜となっている。さいたま市内では緑区・岩槻区を中心に栽培されており、同組合では6人の生産者が約2万8000平方メートルの栽培面積で共同出荷している。

 埼玉県のクワイ出荷額は全国でもトップクラスで、品質の良い産地としても知られている。緑区高畑地区は綾瀬川流域で栽培に適していたことから、江戸時代よりクワイ栽培が始まったとされている。

 同地域で栽培するクワイは「青クワイ」と呼ばれている品種で、洗って泥を落とすと、青藍色の鮮やかな色合いが映える。地域によって好まれるサイズが異なり、東京にはL・Mの大玉、関西にはM・Sの中玉、新潟にはSSサイズの小玉を主に出荷している。高級品で青い色合いから「田んぼのサファイア」と呼ばれることもあるという。

 クワイはレンコンのように水を張った田で栽培され、毎年11月下旬から12月中旬にかけて収穫。地上部の葉を刈り取った後、レンコン用の堀り取り機で高圧の水を噴射し、地中のクワイを浮き上がらせてから手作業で拾い取る。真冬に水中で行う作業が多く手間がかかることから、さいたま市内でも年々、栽培農家が減っている。

 同組合メンバーの若谷(わかや)真人さんは「かつては埼玉スタジアム2002の辺りまでクワイ田が広がっており、栽培農家は20軒以上あった。クワイの収穫作業は大変だが、さいたまの伝統野菜であり、次世代まで残していきたい。近年は学校給食でもよく使ってもらっている」と話す。

 クワイはタンパク質とカリウムが豊富で、栗のようなホクホクした食感と、ほのかな苦味がある。ゆでてあく抜きしてから煮物で食べることが多いが、揚げ物にするとあく抜き不要で手軽に食べられるという。手頃な価格で出回る小粒のクワイは、洗ってそのまま素揚げにして食べる。生産農家では薄切りのクワイを揚げてチップスにしたり、すりおろして揚げたりして食べている。

 若谷さんは「今年は台風が少なかったため、大玉が多く出来が良い。収量も多め」と話す。同組合のクワイはJA全農さいたまを通じて全国の市場に出荷されるほか、12月上旬ごろから「木崎ぐるめ米ランド」をはじめ市内の農産物直売所などで販売予定。

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