「塚本郷 ぶらり道草さんぽ会」が5月13日、さいたま市桜区の塚本郷で行われた。主催は「木曽農園」(さいたま市桜区塚本)と「やまとハーブ」。
塚本郷の野草やその植生、地形や地名などをヒントに、「かつてここに暮らした人々の暮らしや野草の活用方法、歴史を学ぶ」散歩の会。「草刈りをする前に活用できる野草をみんなで収穫したいと企画した」とハーブを使った活動を行う「やまとハーブ」の山崎利江さんは話す。
さいたま市の西を流れる荒川の堤防の河川側に広がる塚本郷には現代の直線的に区画された大規模な水田ではなく、曲線や不ぞろいな形の昔ながらの水田が今も残る。
同地区では古くは1200年以上前の奈良時代から水田での稲作が営まれてきたといわれている。地区内には「八幡神社」や市の指定文化財に登録されている「薬師堂」(目の薬師)、洪水から身を守るための「水塚(みづか)」の跡なども残る。羽倉橋が架橋されるまでは川岸場や渡船場がある河川交通の要衝としても発展した。
当日は、桜区の歴史や地形に詳しい郷土史研究家の榎本高信さんが案内人を務めた。木曽農園に集合し、塚本郷の堤内(堤防の内側)から堤防を越えて堤外(堤防の外側)へ行き、薬師堂から八幡神社を通り、最後に木曽農園の梅畑で野草の摘み取りを行い、地元レストラン「バオバブ」特製の野草を使った弁当を食べるコースをたどった。
参加者に配布された資料には、明治政府の陸軍省測量部が作成した古い軍用地図に、現代の地図と航空写真がとじられ、散歩コースが昔どのような地形だったのかを実感できるよう工夫した。散歩の道すがら、山崎さんはスイカズラ(忍冬)の花の前で、徳川家康も好んで飲んだという「忍冬(にんどう)酒」の話をし、参加者はスイカズラの甘い香りを楽しんだ。
小豆の原種と言われる「ヤブツルアズキ」、シナモンのような芳香がある「ヤブニッケイ」、根が染色に使われる「日本アカネ」、子どもの疳(かん)の虫に良いとされる「カキドオシ」など、知らなければ見過ごしてしまう野草を、参加者は熱心に観察した。
弁当はレストランBAOBAB(バオバブ)(桜区白鍬)の特製弁当。木曽農園とやまとハーブの畑で収穫した野菜や野草を使用した総菜と鹿肉のハンバーグは参加者に好評だった。
山崎さんは「フィールドへ出て現地の道や地形、自生している植物に触れるからこそ新しい発見や気づき、体感できることを今後もシェアしていきたい」と話す。
榎本さんは「昔のことを知れば愛着が湧く。東京に近い場所に素晴らしい里山の自然が残っている。地元を愛し、よりよくしていきたいという気持ちになってもらえたら」と話す。