社会デザイン研究者の三浦展さんと「文化活動家」を自称するアサダワタルさんを招き、郊外の街をいかに魅力的な拠点にするかを考えるトークイベントが8月23日、コミューンときわ(さいたま市浦和区常盤10)で行われた。
「郊外地域文化創造拠点への伏線」と題して行われた同イベント。会場への来場者とオンライン視聴者、合わせて約40人が参加した。会場は、新たな共同体づくりを目指して今年完成した賃貸住宅「コミューンときわ」のコミュニティースタジオ。
主催した「CHICACU Design Office & Bookstore」代表でアートディレクターの直井薫子さんは、コミューンときわに自宅と事務所、書店の店舗を兼ねたスペースを構え、住居の一部を地域に開放する「住み開き」を実践している。
住み開きとは、ゲストスピーカーの一人、アサダワタルさんが提唱する住まい方で、自宅の一部を開放してパブリックな空間に変えていく活動やスペースのこと。トークイベントでは、アサダさんが取材した住み開きの実例のほか、アートディレクターとして携わっている障がい福祉施設での取り組みなどを紹介した。
郊外地域を文化や歴史、生活などの多方面から考察する三浦さんは、都心周辺の画一的なベッドタウンを魅力ある都市にする「郊外多拠点分散」や、空き家を活用する「空き家文化会館」などのアイデアを話した。
「かつては都心に『都会』と『都市』があり、郊外地域は画一的な住宅地だったが、郊外にもショッピングセンターなどの消費地が増え、都心と郊外がフラットになってきている」と三浦さん。魅力的な郊外地域づくりには、その地域の資源を生かし、地域の住民が関与していくことが重要という。
来場したさいたま市南区在住の吉田知津子さんは「近所で面白そうなことをしているなと思い、顔を出してみた。こういう話を聞くと、次の一歩は何だろうと考えるきっかけになる」と話す一方、浦和で生まれ育ちながら、地元に魅力が少ないと感じると言う。「いつか、自信を持って『浦和です』と言える街になれば」とほほ笑む。
直井さんは「徒歩で行ける範囲につながりを作ることで、みんなで地域をボトムアップしていきたい」と、今後の活動にも意欲を見せる。