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北浦和の県立近代美術館で「障害者アート企画展」 135人の300作品

展示内容は絵画のほかステンドグラス、立体造形から分類不能なオブジェまでさまざま

展示内容は絵画のほかステンドグラス、立体造形から分類不能なオブジェまでさまざま

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 「第10回埼玉県障害者アート企画展 Knock art 10 -芸術は無差別級-」が埼玉県立近代美術館(さいたま市浦和区常盤9)一般展示室1・2で現在、開催されている。主催は埼玉県障害者アートネットワークTAMAP±〇(タマップ プラマイ・ゼロ)と社会福祉法人みぬま福祉会。

成宮咲来さんが手の中でゆっくりと銅線を握って作った作品=北浦和の県立近代美術館で「障害者アート企画展」

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 県が行う障がいのある人の「表現活動状況調査」に寄せられた情報を基に選考会で選出した135人のアーティストの約300作品を展示している。選考会には美術関係者、教育関係者、埼玉県福祉部職員、弁護士、施設職員など約50人が参加し、1人につき20枚の付箋を手に約700人のアーティストの作品を見て回り、気に入った作品に貼付。付箋の数を集計した後ディスカッションを行い、最終的に135人を選出した。

 みぬま福祉会工房「集(しゅう)」の宮本恵美さんは「ディスカッションではアーティストを知る施設職員がアーティストのこだわりや作品の生まれた背景を伝える場面もあった。さまざまな立場の人が選考員として参加するのは埼玉県ならでは」と話す。昨年までの来場者数は累計約1万5000人に上る。

 展示内容は多岐にわたる。遊園地が好きで多いときは月に2回も遊園地に行くという片波見知代さんはステンドグラスで遊園地を表現した。ステンドグラス歴22年の片波見さんが約1カ月をかけて作り上げた遊園地には観覧車やメリーゴーラウンドのほか、ショーを行う特設ステージまである。

 鉄道車両の絵と身近な人の似顔絵を描いた横井雅美さんは、かつて美大を目指していたほど美術が好きだったが、しばらく美術から遠ざかっていた。2015(平成27)年に再び創作を始め、最近は昆虫の絵も多く描いている。似顔絵は企画展が終わったら本人に渡すという。

 なお丸さんはオリジナルキャラクターのフィギュアや異空間の職業をテーマにした立体造形「異の職」などを樹脂粘土で創作した。異空間の酒場や雑貨店でたくさんのキャラクターが働いている。このほか、たくさんの花が飛び出している爆弾をテーマにした立体造形などを多数出展している。

 キルト作品に影響を受けて絵画を創作しているという小幡海知生さんは、水族館へ行った時に浮かんだインスピレーションを基に魚をテーマにした絵画を出展した。魚やエビのディテールは図鑑などを参考にするのではなく、頭に浮かんだままを表現しているという。小幡さんは二科展にも何度も入選している。

 キュレーターを務める美術家の中津川浩章さんは第3回から同展に関わってきた。「来場者には障がい者によるアートという視点ではなく、一つのアート作品として鑑賞し、驚きや謎を感じてもらいたい。その上で多様な作品の背景には多様な障がいがあることに思いを巡らせ、障がいや障がい者福祉への理解を深めるきっかけにしてほしい」と話す。

 6日と7日には出展アーティストや支援者が作品への思いを語る「アーティストトーク」(両日とも11時~)、8日には中津川さんと新潟市美術館館長の前山裕司さんが見どころや作品の楽しみ方などを話す「ギャラリートーク」(10時~)が行われる(いずれも申し込み不要)。

 開催時間は10時~17時。入場無料。今月8日まで。

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