緑区原山在住の華道家・岡田理香さんが12月、東京都内で開催された「第91回全日本いけばなコンクール」で文部科学大臣賞を受賞、実質2位で「特別審査の部」の頂点に輝いた。
同コンクールは1932(昭和7)年、生け花界で初めてコンクール制を導入した展覧会。流派や年齢、性別、国籍も問わず誰でも自由に参加できる。通算91回目を迎え、約5部門で100人以上が参加した。
古流松藤会教授の岡田さんは、生け花教室を閉めた約20年前から公民館や福祉施設で教えている。花材は、不用品の和服や楽器を使う時もあり、斬新な発想で生け花を表現してきた。
コンクールの作品は、畳をほどいてイグサを束ねて稲掛けのように下げ、赤い実や外国産の植物エアプランツなど10種類以上を使って仕上げた。過去に10回出品したことがある岡田さんは「長年、目標としていた賞に届かず何度も諦めようとした。今回も無理だと思い、審査の時には会場に行かず家にいた。電話で受賞の知らせを聞いた時には、うれしくて涙が止まらなかった」と目を潤ませる。
熊本県八代市出身の岡田さんは、特産品のイグサを栽培する農家で育った。2歳の時、弟を出産した母が他界し、仏壇には常に花が供えられていたという。野原の草花を摘み「花を見て心が和む幼少期を過ごした」と岡田さん。高校生のときに華道教室に通い、結婚して埼玉に移り住んでからも華道に携わっていた。岡田さんに影を落としたのは、熊本の震災と恩師の古流松藤会の上野さんが他界したことだった。「先生からコンクールに出てほしいと言われたのが遺言になってしまった。今回挑戦する花材はイグサしかないと思い、熊本から畳を送ってもらった。亡き先生や母親、故郷の熊本、家族、親戚、仲間を思って一心に生けた」と岡田さん。
教室に通う生徒には「作品を見る人が幸せな気持ちになれるよう心掛けて。自分が元気だからこそ花を生けられる感謝を忘れずに」と岡田さんは伝えている。