
障害のある人とない人が一緒に働く食事処「自家製うどん にちにち草」が3月17日、さいたま市役所本庁舎東側広場の市民サロン棟にオープンした。
運営は、さいたま市内で障害者支援施設「ゆずり葉」や生活介護事業所「杉の子マート」などを展開する社会福祉法人「埼玉福祉事業協会」(さいたま市西区)。うどんの製麺事業は、「うどん店を畳む」という人から連絡をもらったことがきっかけで始めたという。「後継者がなく閉店した『松葉納豆 鶴の子本舗』を当法人が受け継いだというニュースを見て連絡があった方から不要になった製麺機を引き取り、職人に指導を受けて麺作りを始め、試行錯誤を重ねてきた」と同法人理事長の高橋清子さんは振り返る。
福祉職の人が飲食を学んで店を始めるのではなく、調理師や栄養士などの専門職経験者が、障害のある人と働くことを学んで店を作っている点が同店の特徴。高橋さんは「それぞれの力を生かせる場面を見つけ、業務を分担している。話すことが好きな人には接客を、手先の器用な人には盛り付けを任せる。食材やおしぼりにも法人内事業所の製品を使っている。いろいろな個性を持つ人たちの力が合わさって店が成り立っている」と説明する。
同店のメニューには、自社農園で生産した野菜や果樹、米や蜂蜜のほか、埼玉県産の野菜などを使い、法人内の給食調理で経験を積んだ障害のあるスタッフが「ステップアップ」で厨房を担当する。かけうどん(440円)、にちにちうどん(740円)、えび天うどん(900円)などの自家製うどんメニューのほか、あかしあの森カレー、和総菜ご膳(以上800円)などのご飯メニューもそろえる。「お子さま向けメニュー」(400円~)や、チーズケーキ、抹茶ロールケーキ(以上500円)などのデザートやドリンク(400円~)も用意。販売スペースでは、自家製うどん、同法人の多機能型事業所「あかしあの森」のパンや焼き菓子、松葉納豆を継承して生産する「杉の子納豆」などを販売する。
同店で働く鶴田順美(ゆきみ)さんは、「お客さまの喜ぶ顔が見られてとても楽しい。3年ほど『ゆずり葉』のパン工場で働いていたが異動してきた。最初は不安で断ろうかと思ったが、高橋さんから『失敗してもいい、それが成長につながる』と言われ、やってみることにした。時給もアップして、チャレンジして良かった」と話す。高橋さんは「おいしく食べてもらうことが、障害のある人の自立につながる。平日17時以降や市役所閉庁日は宴会の予約も可能。ぜひ利用してほしい」と呼びかける。
2人連れで来店した40代男性は「打ち合わせの後、お茶に立ち寄った。2回目の来店だが、過ごしやすくていい」と話す。以前、同法人の試食会でもうどんを食べたという40代男性は「野菜かき揚げうどんとミニカレーを食べた。半年前の試食会よりおいしくなって驚いた」と話していた。
営業は市役所開庁日・時間に準じる。事前予約の場合、開庁日の17時以降や閉庁日の営業にも対応するという。