鈴木写真館(埼玉県さいたま市浦和区仲町2、TEL 048-822-2468)で3月17日~21日、造形作家・田中千鶴子さんの作品展が行われた。
9月に開催される「さいたまトリエンナーレ2016」のパートナーシップ事業として、旧中山道沿いの建築物や街中にアート作品を展示。アートを身近な存在として紹介する取り組みの一環。
田中さんは造形作家としてこれまでに数多くの作品を展示会に送り出してきた。「地球は鉄でできている」との思いから、錫スズなど金属を中心に、人の行為や自然などをコンセプトとして多様な作品を作っている。同イベントへの参加は2014年から3回目。
今回出展した作品は「種の領域」をテーマに、種と生命をコンセプトにした作品が4点。普段素材としている金属ではなく、ろうそく「パラフィン」やクレヨンに使われている素材を用いて制作、保存瓶のようにも見える作品には黒い斑点がちりばめられている。オタマジャクシの卵にも見える不思議な黒い粒は植物の種。さんご樹と鈴懸けの木に似たような木とウノハナの種で、種は全て田中さんの地元である東川口で採れたものだという。
さんご樹の種を使ったという保存瓶の作品は、ふたを開けると五輪塔をイメージした造形物が納められている。五輪塔はインド発祥の仏塔の一種で、舎利(遺骨)を入れる容器に使われたともいわれる。日本では供養塔や供養墓に多く見られ、その形状は宇宙を構成する5大要素である土・水・火・風・天がコンセプトといわれており、保存瓶同様にパラフィンで作られた同作品のコンセプトにも通じている。
田中さんは「自分の中でノスタルジーを感じ、鈴木写真館での展示となった。今回は特に自然や真理について、自分なりの思いを込めた作品となった。これからも自然や鉄、鋳込みという自分のエレメント(構成要素)を大切にしながらさまざまな表現をしていきたい」と意気込みを語った。