
埼玉県など地域産の小麦粉を使ったドーナツとパンの店「TSUKUSHI Donuts(ツクシドーナツ)」(さいたま市南区別所2)が9月1日、武蔵浦和にオープンした。
店主のイノセミドリさんは大学の理系学部を卒業後、12年間、編集者として「食と農」をテーマにしたカタログや冊子の企画・編集、企業の社内報に携わった。「多くの人と関わる中で社会が見え、さまざまな価値観があることを学んだ」と振り返る。前職にもやりがいはあったが、自分のアイデアを形にする楽しさを実践したいと退職し、「土筆堂(つくしどう)」として活動を始めた。
自宅でのパンやみそ作りの教室でスタートし、その後、「『団地キッチン』田島」(桜区)でのワークショップディレクションやパンの製造・販売、イベント出店に加え、福祉施設や中学校でのワークショップも手がけた。シェアキッチン「北浦和イッカイ」(浦和区)で月2回、ドーナツを販売した経験については、「地域の人とのつながりや小売りの楽しさを知り、出店への自信につながった」と振り返る。
店名の「つくし」には、小さくても力強い縁の下の力持ち(編集者)として皆を助けたいという思いを込めた。さらに、「つくるわたし、つくらないわたし」の前後を取った言葉遊びも含まれており、「どちらも同じ『つくし』で、強制せず二面性を認め合えたら」という意味合いもあるという。場所については、「さいたま市南部で探していたが、なかなか希望の物件に出合えず、一軒家を購入して活用することも考えた。1年ほどかけ、この場所に巡り合えた」と話す。店舗面積は8坪。イートインスペースも設ける。
ドーナツ生地には、埼玉県や群馬県の小麦粉「農林61号」の中力粉(うどん用粉)を使う。「素朴でシンプルな飽きの来ない味わい」とイノセさん。野菜やハーブも地域産を取り入れる。イースト生地の「地粉ドーナツ」は「シュガー」「きび糖」「きなこ」「シナモン」の4種類。シュー生地の「地粉クルーラー」は「シュガー」「シナモン」(以上300円)の2種類。「地粉ドーナツサンドイッチ」(450円~550円)はハム&チーズや、八角を使ったスパイスカレーなどを日替わりで提供する。ドリンクは「アイス珈琲(コーヒー)」(400円)、「ハンドドリップのホット珈琲(冬季のみ)」(500円)、「りんご100%ストレート」(350円)、「グレープフルーツジュース」「牛乳」(以上250円)をそろえる。
イノセさんは「まだ見ぬ何かを作りたいという思いが根底にある。普通の飲食店とは違う形で、自分のやりたいことを形にして作っていきたい」と意気込む。「食べることと作ることがつながるといいと考え、ワークショップなど『作れる』場にもした。地域の暮らしに寄り添う店として、いろいろな人が気軽に来れる場を目指しているので、ぜひ立ち寄ってほしい」と呼びかける。
営業時間は11時~16時(土曜は14時まで)。水曜・日曜定休。生地がなくなり次第終了。