決勝戦では2点を先制される苦しい展開の中、流れを変えるプレーを見せたのが矢島慎也選手で、後半22分には浅野選手へ絶妙なスルーパスを通してゴールを演出すると、1分後には左サイドからのクロスに自らゴール前に飛び込んで同点ゴールを決めた。36分に浅野選手が逆転ゴールを決め、日本代表が逆転で韓国代表を下してアジア大会を優勝してリオデジャネイロオリンピックへの出場が決定した。
この決勝戦で1ゴール1アシストと大活躍した矢島選手は何を隠そう浦和出身のプレーヤー。浦和はもともとサッカーの街として歴史を紡いできた街で、現在でも各小学校を拠点とした36のサッカースポーツ少年団が活動する全国でも希少な存在となっている。その浦和の中で最も伝統のある北浦和サッカー少年団で育ったのが矢島慎也選手だ。
【同じ北浦和サッカー少年団の先輩の山田直樹選手(湘南ベルマーレ)と矢島慎也選手】
北浦和サッカー少年団は数々のJリーガーも輩出してきた伝統のあるサッカー少年団。アルゼンチン、ブラジルでも指導歴のあるスポーツプログラマー吉野弘一監督の下、矢島選手もテクニックを磨き、2006年に浦和レッズジュニアユースに入団。その後もレッズユースを経て、2012年に浦和レッズのトップチームに昇格してプロデビューを果たした。
浦和レッズでは、なかなか出場の機会を得ることができず、2015年にJ2のファジアーノ岡山へレンタル移籍。徐々にチャンスをつかみ、2015年は37試合に出場して「岡山の心臓」と呼ばれるまでの中心選手となった。「止めて蹴る基本技術の高さと非凡なパスセンス。そして明確なビジョンを持ってゲームを展開することができる能力がある」と、岡山を取材するライターの寺田弘幸さんも解説している。
矢島選手は、今季もファジアーノ岡山へのレンタル移籍延長が発表されており、エース番号の10番を背負うことが決まっている。岡山の地から今年の8月に開催されるリオデジャネイロ五輪の出場メンバー入りを目指すことになるが、アジア予選決勝での活躍でも浦和の街は大いに盛り上がった。オリンピック本大会でも活躍を見せて、さらにサッカーの街が盛り上がる話題を提供してほしい。
文・椛沢佑一(浦和フットボール通信)
浦和フットボール通信
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