プレスリリース

【岡山大学】地球マントルの謎の溶融層の形成メカニズムを解明

リリース発行企業:国立大学法人岡山大学

情報提供:




岡山大学と高輝度光科学研究センターの共同研究成果プレスリリースです。


2025(令和7)年 5月 9日
国立大学法人岡山大学
https://www.okayama-u.ac.jp/


<発表のポイント>
- 地球のマントルには410kmの深さにある不連続面上に2重の低速度層がしばしば観察されますがその成因は謎でした。
- 高圧下でマントルを構成するケイ酸塩物質に水を加えたものを溶かして重い球を落下させることで溶融物の粘性を決定したところ、異常に粘性が低いことが分かりました。
- モデル計算から、上昇するマントル対流の部分で水を含む溶融物が存在する場合に2重の低速度層を再現できることが分かりました。


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)高等先鋭研究院を構成するひとつである惑星物質研究所(岡山大学学術研究院先鋭研究領域)の芳野極所長・教授が参加する、日英仏米の国際的な科学者チームが、地球マントル深部に存在する謎めいた溶融層の成因を調査しました。

 Nature Communications誌(2025年4月4日)に掲載されたこの研究は、高圧科学技術先端研究センター(HPSTAR)とユニバーシティ・カレッジ・ロンドンに所属する岡山大学出身のロンジャン・シェ博士が主導しました。

 地球深部の水を含むケイ酸塩メルトの粘性測定から「メルト・ダブレット」と呼ばれる、地球の410 kmのマントル不連続面より上に位置する一対の溶融岩石層の形成過程を解明しました。岡山大学の高圧実験技術とSPring-8の強い放射光を用いて高温高圧下の含水ケイ酸塩溶融物(メルト)の粘性を測定し、モデル計算により、地球深部における溶融挙動がマントルのダイナミクスや水循環に及ぼす影響に関する謎を解き明かしました。この研究によりマントルの対流や化学進化への理解が進むことが期待されます。

 本情報は、2025年5月8日に岡山大学から公開されました。



図. 低粘性により410 km不連続面より上において2重溶融層の形成が可能になることを示す模式図。(a) マントル溶融物の粘性に対する水の影響。(b) アファープルーム領域で観測された溶融層分布。Thompson et al. (2015) から改変。



◆芳野極所長・教授からのひとこと
 岡山大学惑星物質研究所で博士の学位を取得した学生との共同研究からこの成果を得ることができました。SPring-8の高輝度放射光と惑星物質研究所の高圧発生技術によって、地球深部の高温高圧状態の物質をその場で観察することができます。研究者を目指す若者が減っていますが、ワクワクドキドキするような体験を我々と一緒にしてみませんか?






◆論文情報
 論 文 名:Low melt viscosity enables melt doublets above the 410-km discontinuity(和訳:低粘性メルトは410km 不連続面直上の二重メルト層を生み出すことができる)
 掲 載 紙:Nature Communications
 著  者:Longjian Xie, Denis Andrault, Takashi Yoshino(芳野 極), Cunrui Han, James O. S. Hammond, Fang Xu, Bin Zhao, Oliver T. Lord, Yingwei Fei, Simon Falvard, Sho Kakizawa(柿澤 翔), Noriyoshi Tsujino(辻野典秀), Yuji Higo(肥後祐司), Laura Henry, Nicolas Guignot & David P. Dobson
 D O I:10.1038/s41467-025-58518-7
 U R L:https://www.nature.com/articles/s41467-025-58518-7


◆研究資金
 本研究は、独立行政法人日本学術振興会(JSPS)「科学研究費助成事業」(基盤S・21H04996研究代表:芳野極)、RCUK grants (NE/X009807, NE/T006617研究代表:David Dobson)の支援を受けて実施しました。また、本研究はSPring-8の課題番号2023A1109, 2024A1175で実施しました。ダイヤモンドシーリング技術は、フランスのソレイユにあるプシシェで、課題番号20230084、20220234、20211568、および20201203の支援を受けて開発されました。回収されたサンプルのトモグラフィーは、ClerVolcの2024年度ビジタープログラム(課題番号686)の支援を受けて実施されました。ダイヤモンドカプセルの製造は、英国王立協会の大学研究フェローシップ(UF150057)の形で部分的に支援されました。ビームタイムの実験準備は、岡山大学惑星物質研究所(IPM)の2023年度共同利用・共同研究拠点の支援を受けて行われました。


◆詳しい研究内容について
 地球マントルの謎の溶融層の形成メカニズムを解明
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20250508-1.pdf


◆参 考
・岡山大学惑星物質研究所(IPM)
 https://www.misasa.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学惑星物質研究所 地球内部物理学(HACTO)
 https://www.cc.okayama-u.ac.jp/~hacto/top_j.html


◆参考情報
・【岡山大学】プレート運動はマントルのアセノスフェアの水が駆動する
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001588.000072793.html
・【岡山大学】惑星物質研究所の芳野極教授が「日本鉱物科学会賞」を受賞
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001705.000072793.html


◆参考動画
 岡山大学惑星物質研究所紹介動画集
 https://www.misasa.okayama-u.ac.jp/movie/
 https://youtu.be/UQtAxdYGI0k
https://www.youtube.com/watch?v=UQtAxdYGI0k












岡山大学惑星物質研究所の位置(googleマップより)



◆本件お問い合わせ先
<研究に関すること>
 岡山大学 学術研究院 先鋭研究領域(岡山大学惑星物質研究所) 所長・教授 芳野 極
 〒682-0193 鳥取県東伯郡三朝町山田827
 TEL:0858-43-3737
 FAX:0858-43-2184
 https://www.cc.okayama-u.ac.jp/~hacto/top_j.html

 高輝度光科学研究センター 回折・散乱推進室 主幹研究員 肥後祐司
 〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1-1
 TEL:050-3502-3587
 https://www.jasri.jp/organization/organization-research-section/diffraction.html
 
<SPring-8/SACLAに関すること>
 高輝度光科学研究センター 利用推進部 普及情報課
 〒679-5198 兵庫県佐用郡佐用町光都1丁目1-1
 TEL:0791-58-2785
 FAX:0791-58-2786
 https://www.jasri.jp/organization/organization-office-section/riyou-suisin.html

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8463
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 機器共用推進本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:086-251-8745、086-251-8746
 FAX:086-251-8748
 E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://fspp.kikibun.okayama-u.ac.jp/

<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 E-mail:start-up1◎adm.okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://venture.okayama-u.ac.jp/

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 岡山大学SDGs~地域社会の持続可能性を考える(YouTube):https://youtu.be/Qdqjy4mw4ik
 岡山大学Image Movie (YouTube):https://youtu.be/pKMHm4XJLtw
 産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2025年4月期共創活動パートナー募集中:
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003002.000072793.html






国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください
- 岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html



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