
「10代目龍神・マルコ開眼式」が3月9日、緑のトラスト1号地(さいたま市緑区南部領辻)近くの見沼田んぼで行われ、地域住民など36人が参加した。主催は特定NPO法人「エコ.エコ」。
2012(平成24)年より、見沼田んぼの自然保護活動を行っている同NPO。「シンボルとなるような芸術作品があれば、この土地の自然に関心を持ってくれる人が増えるのでは」と考え、見沼田んぼに古くから伝わる伝説の「龍神」を作ることを思い付いたという。「マルコ」の名前は、エスペラント語で「湿地」を意味する。2015(平成27)年より毎年、保全活動で間伐した竹やヨシ、クズ、ミズキなどを材料に、およそ2週間かけて全長20メートル、高さ2メートルほどの「龍神」を、ボランティアの協力を得て製作。最後の仕上げとなる「開眼」を、地域住民の参加を募って行う。
開眼式では冒頭、同NPO代表の加倉井憲一さん、設計を担当した深石俊治さんがあいさつした後、開眼の作業に入った。筆入れは子どもたちが担当し、オカリナの演奏が響き渡る中、今年は赤色の塗料を竹でできた龍の目に塗り込んだ。「お清め」には大人も加わり、清酒を「龍神」の口に注いだり体に水をかけたりしてもてなした。最後は参加者全員で「幸せなら手をたたこう」を歌い、手締めをして閉式。式後は特別に、子どもも大人も「龍神」に上り、写真を撮影するなどして完成を喜んだ。
加倉井さんは「飛んでいるオオタカやノスリが見えるほどの天気に恵まれ、申し込みの方だけでなく散歩に通りかかった方にも立ち寄ってもらい、新たなつながりも生まれた。湿地のヨシは、燃やすのではなく刈ることで絶滅危惧種の「コガネグモ」を守ることにつながり、刈ったヨシのわらは『龍神』の体になると同時に、絶滅危惧種の「シロスジフデアシハナバチ」のすみかとなる。『龍神・マルコ』がこの地の生物多様性のシンボルとなって、自然保護活動に興味を持つきっかけになれば」と期待を込める。「5月4日に行われる『祇園磐船龍神祭(ぎおんいわふねりゅうじんまつり)』では、竜神行列が龍神・マルコにも立ち寄る。今日とはまた違った、花と緑のある見沼田んぼの風景も楽しめるので、ぜひ見に来てもらえたら」と呼びかける。
毎年参加しているという女子高生は「貴重な経験ができていると感じる。見沼の自然から得られる材料があって出来上がる、ここにしかない『龍神』なのがいい。周りには、自然に触れた経験が少なくて昆虫が苦手だという子どもも多い。実際に自然の中に入って触れてみることは大切」と話す。
初参加の30代男性は「仕事で通りかかることがあり、『龍神』はよく見かけていた。こうしたイベントを通じて地域の人が集まるのは良いこと。この辺りには、人の手が入り続けていたからこそ保たれてきた『里山』の生態系が残っている。自分も環境に関わる仕事をしているので、保全に協力していきたい」と話していた。