北浦和のオーセンティンクバー「一滴水(いってきすい)」(さいたま市浦和区北浦和1)が10月1日で5周年を迎える。
店主の佐藤慶太さんは浦和のバーで15年経験を積み、妻の真羽(まはね)さんと夫婦で店を開いた。店の場所を北浦和に決めたきっかけについて、「落ち着いた街で、やりたい店の雰囲気に合っていたから」と話す。当時、浦和の飲食店街「ナカギンザセブン」が街開発の都合でなくなり、北浦和に移転する店が多かったことも後押しした。
店名は禅語の「曹源(そうげん)の一滴水」が由来。「小さな一滴の水が、やがて大河につながることから、小さなことを大切にしていきたい」との思いを込めている。禅や茶の湯の「心の整え方」に興味を持っていた佐藤さん夫婦は、京都の禅寺などを巡り店のイメージを固めていったという。
店の扉を開けると、つくばいを囲む小さな露地庭園がある。「つくばいから落ちる一滴の水が、川となり海に注ぐ」というイメージをもとに、近隣の料亭「玉家」(浦和区常盤)を手がける庭師に作庭を依頼したという。
カウンターにはウイスキーたるに使われる岩手県産のミズナラ材を使用。ボトルが並ぶバックバーは、ウイスキーの琥珀(こはく)色がきれいに映るよう照明を工夫している。看板メニューの「一滴水ハイボール」(950円)は、グラスの縁につくばいのコケをイメージした抹茶をあしらい、抹茶リキュールを垂らしたハイボール。このほか、ウイスキーと小豆リキュールを使った「一滴水アレキサンダー」など、オリジナルの和風カクテルをそろえる。
バーフードは洋食メニューを「充実させた」という。「デミハンバーグオムライス」(1,880円)、「ルパンと次元のミートボールパスタ」(1,480円)などが好評で、「エビマカロニグラタン」(1,280円)は漫画「ワカコ酒」でも取り上げられた。
2019年の開業後間もなく、コロナ禍で休業や営業時間変更を余儀なくされた。バーフードのメニューをランチ営業で提供したところ好評で、バーを訪れる客も増えたという。
客層は30~50代の1人客や夫婦が多い。「コロナ禍後はお客さまの動向が変わった。以前は2軒目利用で23時過ぎに訪れる方が多かったが、今は1軒目で食事と共にお酒を楽しむお客さまが増えている」と佐藤さん。近隣に住む50代女性客は「京都にありそうなシックな雰囲気のバーで、北浦和にこんなすてきな店があるのかと驚いた。バーフードがどれもおいしく、仕事帰りに時々立ち寄っている」と話す。
佐藤さんは「地元の人に支持してもらい、最近では結婚式の2次会など貸切利用が増えた。今後は遠方からの来店客に向け、1990年代以前のオールドウイスキーや、閉鎖した醸造所のウイスキーなど、希少なウイスキーの品ぞろえを充実させていきたい」と意気込む。
営業時間は19時~翌1時。日曜・月曜定休。5周年記念で10月1日~5日、1杯を半額にするほか、スペシャルメニューも用意する。