企画展「『スケルと、ん!?』~魅(み)せる骨たちの透明標本展」が現在、さいたま市青少年宇宙科学館(さいたま市浦和区駒場2)で開催されている。
透明標本作家・冨田伊織(とみたいおり)さんの作品を紹介する同展。冨田さんは埼玉県狭山市出身。北里大学水産学部在学中に研究用の透明標本に興味を持ちオリジナルの標本制作を始めたという。2008(平成20)年には「新世界『透明標本』」を名乗り活動をスタート。2012(平成24)年にはフランス・パリで開催された国際的なテキスタイル見本市「プルミエールビジョン」のメインイメージ画像に透明標本の作品が採用された。
スピード重視で短期間に作るという研究用の学術標本に比べ、冨田さんの透明標本は「透明感」を引き出すために、半年以上時間をかけて作る。透明標本にするのに適しているのは体長数センチほどの大きさの生物。小さな生き物の肉質を残したまま筋肉を透明化すると、生きていた時のそのままの形で、傷付けず立体的に骨格を観察できるという。
たんぱく質を分解する酵素などを使用すると肉質は透明になる。特殊な薬液で硬い骨「硬骨(こうこつ)」を赤紫色に、軟らかい骨「軟骨」を青色に染色するが「生きものの内臓」や「卵」に生きもの自身の色が残ることがあり、透明になり切らず黄色味を帯びる。この黄色味に、軟骨が染まった青色が重なって緑色に見えることも。
今回が初披露となる会場内に展示の説明パネルは冨田さんが2年かけて作り、専門的な内容をできるだけ読みやすくしている。説明パネルの横には豆知識のパネルも貼り、全ての漢字に平仮名で読みを振り、子どもだけでなく大人にとっても難解な内容を分かりやすく伝える工夫を随所に施している。
来場者の女性は「作品として芸術的に美しく、標本としても分かりやすい。パネルの漢字全てに読みが振られているので内容がすっと頭に入って勉強になる。本当に来てよかった」と笑顔を見せた。さいたま市青少年宇宙科学館主任指導主事の阿部順行さんは「非常にきれいで貴重な標本。大人も子どもも来場してもらえれば」と呼び掛ける。
冨田さんは「生物の造形、美しさを見てほしい。透明標本も生き物。生きている時には感じられない『生きていない生き物』から得られる知識で、生き物は美しいと感じてもらえたらうれしい」と話す。
開館時間は9時~17時。月曜休館(月曜が祝日の場合は翌平日)。入場無料。3月21日まで。