うらわ美術館(さいたま市浦和区仲町2)で4月1日から、「~COOL JAPAN~ かわにしすみえ人形展」が行われる。
同展では岩槻出身のかわにしさんが10年にわたり制作してきた和装・洋装の人形を展示する。これまでも有楽町や岩槻のギャラリー、カフェ・銀行などに出展してきた人形は、「かれん・はかなげ」な表情が特徴的で、衣装もすべて手作り。
そんなかわにしさんの人形作りで特にこだわりを持っているのは、その「製作技法」。出身の岩槻は人形の街として知られるが、もともとは江戸時代初め、日光東照宮の創建に際して集められた職人たちが、原材料の豊富な岩槻にとどまったのが始まりとされている。
現在でもひな人形の生産など全国的に有名で、さいたま市もその情報発信拠点として「岩槻人形会館」の建設を計画しているが、最盛期200以上あった工房が現在ではおよそ80程度と大きく減少している。
技術の継承も危ぶまれる中、かわにしさんはあくまでも伝統の天然素材と技術による人形制作にこだわって創作活動を続けてきた。桐(きり)粉や胡粉(ごふん)、膠(にかわ)など、現在一般には市販されていない素材を合わせた粘土からできる人形は、非常に軽量かつ強度が高いという。
伝統の知恵といえるものだが、こうした天然素材は入手も困難で仕込みに時間もかかるため、現在ではほとんど使用されていない。
「制作における技術の継承は、流行の浮き沈みの中で簡単に途絶えてしまうが、一度途絶えた技術を再生させることは大変困難。『人形の街、岩槻』にこそ、こうした素材・技術を残すべき。そのためには人形制作を『産業』としてとらえるのではなく『文化』として考え、自治体も一緒になって優れた作家の育成に力を注げれば」とかわにしさんは話す。
「どんな時代であっても人形は常に人間の伴走者。悲しみを背負い共有するだけではなく、未来に希望が持てる優しさと幸福感に満ちた人形を作っていきたい」とかわにしさん。
開催時間は10時~17時。4月12日まで。入場無料。