春の温かさを感じさせる日和となった3月15日、田島氷川神社(さいたま市桜区田島4)で春の大祭が執り行われ、約400年の歴史を持つ「田島の獅子舞」が奉納された。
獅子舞は、江戸時代の1644年に田島氷川神社に奉納したのが起源とされ、笛方の音に合わせて大獅子、中獅子、女獅子が太鼓をたたきながら舞う。庭回りから始まり、3体の獅子の出端(では)、獅子唄、骨返り、弓掛けなど10以上の演目を約30分かけて舞うのが特長。春の大祭(3月15日)、夏の大祭(7月14日)、秋の大祭(10月6日)の近い日曜日に奉納されてきたが、夏の猛暑が激しくなったことから最近は夏の奉納はやめているという。
1958(昭和33)年に旧浦和市の無形民俗文化財に指定された(現在は、さいたま市指定無形民俗文化財)。舞方が地元生まれの農家の長男という伝統があったことから後継者がいなくなり、1970(昭和45)年を最後に獅子舞は途絶えてしまった。しかし、地元有志が1980(昭和55)年に声をかけ合い、獅子舞保存会を結成。翌年に復活させ、今に至っている。
田島の獅子舞保存会の会長・白石正一さんも復活に携わった一人。「楽譜とか資料はなく、笛も舞も全て聞いて、見て覚えていくのが習わし。復活当時は経験者が少なく苦労したが、45年間、地元の伝統を守り続けてきた。次の世代に引き継ぐ責任がある」と気を引き締める。
春の大祭当日は、10時過ぎから神主のおはらいを受けた後、鳥居からたいまつを先頭に花笠、お宝持ち、弓持ちなどが笛に合わせて行列をつくり、参内。大勢の見物人が詰めかけた境内で舞を披露し、山場である弓掛けの場面では大きな拍手も送られた。
獅子舞が終わると白石さんが獅子頭を頭上に持って見物客のおはらいに。疫病退散や健康維持のご利益があとるとされることから、獅子頭に駆け寄る人もいた。白石さんは「笛も舞もばっちり。2年前に加わった若手も上達してきた」と伝統が引き継がれていくことに手応えをつかんだ様子だった。
花笠役を担ったのは、地元育ちの岸本恵里花さん(中学2年)と白石愛莉さん(小学3年)の2人。「少し緊張した」と大役を終えてホッとした様子も見せた。地元で育ったという千葉君代さん(70代)は「毎年見に来ている。一度途絶えた歴史を考えると皆さんの努力に感謝しかない。これからも伝統を守り続けてほしい」と期待する。