岩槻人形協同組合(さいたま市岩槻区)と文京学院大学(東京都文京区)は3月3日、伝統工芸技能とその優れた作品を世の中に広め、将来的な発展につなげていくことを目的に、連携協力体制を発足し産学連携の取り組みを推進する協定を締結した。
調印式後に握手を交わす岩槻人形協同組合(新井久夫理事長、伴戸武三専務理事)と文京学院大学(島田昌和教授、工藤秀機教授)
同日、協定調印式ならびに商品発表会がときわ会館(さいたま市浦和区常盤6)で行われた。協定締結に伴う取り組みの第1弾として、同大学の経営学部2年生の学生が中心となり、学生たちのアイデアと岩槻人形の技術を融合させた新商品を開発した。
学生たちはまず岩槻の人形産業の現状を調査し、伝統的工芸品が国民の生活スタイルにおいてどのような位置にあるのかを分析。生活スタイルの変化などにより衰退傾向にある伝統的工芸品を再生させるために、工芸品を「現在の生活スタイルに合わせ、需要を作り出す」ことが必要だと考え、「フクロウの眼鏡置き」を考案した。
会見で岩槻人形協同組合の新井久夫理事長は、学生たちのアイデアを初めて見た時に「本来ガラスケースに入れて飾る人形を日常的に使うということに抵抗があり、これは非常に難しい試みだと感じた」という。しかし、学生たちと議論を重ね、伝統技術と学生たちの斬新なアイデアを融合した商品の完成にこぎ着けた。
同商品は3月15日~4月17日、「代官山 蔦屋書店」(東京都渋谷区)1号館1階の人文フロア 日本文化コーナーで展示販売する。今後は学生主導で、SNSを通じてプロモーションを行いウェブサイトで販売するシステムを構築していく。
同プロジェクトに参加した同大学の中野拓人さんは「物作りの現場に入っていくことに最初は戸惑いがあったが、岩槻に何度も通い職人さんたちと話をしていき、最後は『若い皆さんの考えに触れ、われわれも勉強をさせていただいた』『職人たちもワクワクしながら取り組んだ』と言っていただき、とてもうれしかった」と話す。
岩槻人形の職人と文京学院大学の学生たちによる産学連携のタッグは今後、第2弾、第3弾と続いてく。